すべての鍼灸師が知っておきたい法律

鍼灸師・鍼灸学生

私もパート鍼灸師を雇っていたことがあったので、その際に労務の勉強しました。

「労務」はひとり鍼灸院を経営しているうちはまったく必要ありません。
ですから人を雇う段階でゼロから学ばなければならないジャンルです。

そして、その内容たるやビックリすることだらけのものでした。

これは勤務鍼灸師ならもちろんのこと、開業鍼灸師でも将来的に雇用を検討しているならあらかじめ知っていたほうがよい内容ですのでご紹介します。

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労働基準法

労務に関しての中心的な法律で、よくよく読み込むとビックリ箱のようなことがいっぱい書いてあります(笑)

まず「労働基準法」とは、労働条件に関する最低基準を定めた法律です。
注目!
「最低基準の内容」です。
ちなみにここで言う「労働条件」とは、労働時間・休憩・休日・休暇・賃金・残業手当などの「待遇」のことです。
正社員だけではなく、パートやアルバイト等の従業員も含めたすべての労働者に適用されます

知っておいたほうがよい特徴を挙げます。

雇用契約よりも労働基準法が上

治療院業界では、雇用契約がそもそも口約束だけというケースも考えられますが、それはさすがにひどいと思います。
・・・ので、ここでは省きます。
院のオーナーや院長と結びますよね、雇用契約(労働契約)。
これは書面で出されることが望ましいとされています。

労働契約書の内容が、労働基準法が定める基準を下回るような内容はアウトです。
たとえそれを労使両方で合意していたとしても、そのような合意は法律上当然に無効です

その部分は、労働基準法で定める基準が適用されます。
ちなみに労働基準法違反の行為については、刑事罰(罰金刑、懲役刑)が科せられる場合があります。

解雇はそうそう出来るものではない

雇い主が労働者を解雇しようとします。
解雇には法律で決まったルールがあります。
解雇の理由を通知し、少くとも30日前にその予告をしなければならない(もしくは30日分以上の平均賃金を支払う)、です。

ただしこれは解雇できる際の手順です。

解雇にいたるハードルは結構厳しいのです
解雇は法律では「客観的に合理的な理由を欠く解雇は無効」です

「気に入らないから」
「妊娠したから」
「遅刻や無断欠勤が多過ぎるから」
「販売成績が悪過ぎるから」
このような理由で簡単に解雇できません。
この辺は労働者側がかなり厳重に守られている気がします。

ただし、退職勧奨といって「退職しませんか?」という勧めをして、労働者側がそれに応じて「辞めます」となった場合は、自己都合退職なので、雇用側にはなんら制限はありません

たとえば「経営的に厳しいので来月から残業代は出せない。それでもよければ雇うが嫌なら辞めてくれ!」とか言われ「じゃあ辞めます」となると、もめるかもしれません。

解雇なのか?自己都合退職なのか?

会社側は「自己退職しただけ」と考え、のちに社員側が「不当解雇だった」と言って争ってきたとします。
結果的に、これは解雇扱いとなり、無効になることが多いです。
その判断が出てもさすがに社員も元の会社に戻りづらいので正式に退職するとします。
すると、その社員が正式に辞めることになるまでの期間の給与などが「未払い賃金」になります。
その社員が出社してこなくなった場合でも、法律的に有効に社員の身分を失うまでは、会社は賃金等を払う義務あるからです。。
雇用側からしてみれば、「出社していないのだから給与など払わなくてよい」と考えがちですが、その社員に「仕事をしていないが社員としての資格がある期間の賃金」を払わなければならない事態がありえるのです

労働時間が治療院業界の実情に合っていないが・・・

1週間に40時間までしか労働させてはいけません。
しかも1日8時間を超えてはいけません。

このルールは(雇用側に)厳しすぎませんか?
だって自分(院長)が余裕で超えているのにそれと同等に働いてもらえないなんて・・・と感じました。
そして、このルールを守っている治療院がどのくらいあるのか・・・謎です。

【例】
9時から19時でやっている治療院の場合。
休憩なし時間が10時間あります。
なので途中休憩なしで勤務させることはできません。どこかに休憩を入れなければいけませんね。
仮に12時から15時までは休憩とします。
9-12時・15-19時が勤務時間だとすると7時間勤務ですね、
ですが、じゃあ9時ピッタリに出社で良いかといえばそれでは遅いでしょう。
8時半には勤務開始からとなります。
また、19時ピッタリに退社できればいいですがこれまた難しいでしょう(オーバーした分は残業代になります)。
19時半までの就業とします。
すると8:30-12:00と15:00-19:30で「8時間」です。
これを週5日までしかできません。

このように週休1日はほとんど無理です。
週休2日はほぼ確定です。
毎日6時間程度なら6日いけますが、それで月給は出せないでしょう。

ちなみに、ほとんどの治療院で「変形労働時間制」というルールを使うことになると思います。
これは説明が面倒なので詳しくは略しますが、1日8時間ではないけど週40時間は守るよという独自ルールをあらかじめ定めるというものです。

その辺まできちんと作りこんでおく必要があります。

ちなみに休憩時間の定義も厳しいよ

「休憩時間」の考え方もビックリします。

『勤務が8時間を超える場合は少くとも1時間の休憩時間を与えなければならない。』
これは可能でしょう。

ただし、
『休憩時間を自由に利用させなければならない』
これです。
使用者の指示があればすぐに業務に従事しなければならない、(つまり)労働から解放されていない時間は労働時間の一部であって、休憩時間ではない、のです

休憩時間も受付の電話番をしたり、院のなかで待機しているのは、休憩時間にカウントされないのです!
好き勝手に外に出て行ってのんびりできる、のが休憩時間。
これをどこまで体現できている治療院があるか・・・。

残業・残業と気軽に言うけれど・・・

『労使協定(いわゆる36協定)』という届けを労働基準監督署に届け出ないと、残業させてはいけないです
この協定の締結・届出なしに法定時間外労働や休日労働をさせることはできません。
労働者側として、これを会社が出しているか確認するとよいかもしれませんね。

ちなみに、残業代にもルールあり。
1時間超過したらその分(時給1時間分)を残業代として払えば良い、ワケではありません。
「時間外労働は25%増し」と決まっているので、時給1000円の人の残業代は「1250円」になります。

年次有給休暇

有給休暇は必須です。
正社員だけでなく、バイト・パートにも必須です。
これ重要!(労働者には(笑))
計算は省きますが、だいたい正社員なら10日、パートなら5日くらいはあります。
時給制のパート鍼灸師さんにも有給休暇をあげて、その日には働いていないけど時給換算で1日分支払う必要があります
有給は労働者の権利です。
「おお~そんなの知らなかったよ!」とこれを初めて知ったときつぶやきました(笑)

まとめ

院長は自営業なので、自分が働いた分だけ収入になります。
風邪で休めば無収入。
雪などで交通事情が悪く、患者さんのキャンセルが相次いだら無収入。
昼休みに電話がかかってきたら受け付けます。
朝も夜も必要があれば仕事します。
でも、従業員にはきちんと休みや休憩をあげて、決まった給与を支払う必要があります。
従業員が有給を使って休んだら支払う必要があるし、そもそも事前に申し出た有給休暇はOKしないといけません。
態度が悪くて気に入らない人にも、それだけで「明日からクビ!」とは言えません。
院の経営が悪化した際も、自分の報酬はそのままに従業員のリストラはできません。

こんなことを考えると、怖くて従業員を雇えなくなります。
私自身は労務を勉強した一時期、本気で雇用が怖くなりました。

でも、一番重要なことを書きます。
それは「労使は契約ごとではあるけれど、大事にすべきは心と心のつながり」です。

雇用側(院長さん)へ

ようは、従業員と仲良く、ってことです。

基本的な法律にのっとる態度がそもそも雇用側の誠意でしょうし、過度なご無体なことを言わないのも誠実な態度です。
そうであるからこそ、労働者側も気持ちよく働いてくれるし、会社の事情を汲んで自助努力してくれる面もあるでしょう。
最終的に退職する際も、双方が気持ちよく円満退職になると考えます。

それが感情的にもつれると、法律をたてに双方がワーワー言い合う状況になり、どちらが勝つにせよ結果的にお互いが不快な思いをするでしょう。

最初から正直・誠実な言動が一番です

ただし法律(正しいルール)を知らないと、誠実な行動のつもりが間違った行動だったなんてことにもなります。
ただ知らなかっただけで、です。
労務はきちんと学びたいですね。

そのためにおススメなのは、雇用する前から「就業規則」を作ることです。

「会社のルールブック」のことですが、労働基準法をクリアしたものを作ることで、作りながら労務について学べます。
書籍を読んでも難しいので、社会保険労務士さんに雛形を作ってもらいながら、自分の院のバージョンを作り上げていくとよいでしょう。

労働者(スタッフ鍼灸師さん)へ

治療院業界はまだまだブラック系の就業環境です。
それは、私自身を振り返るに、院長自身が法律(労動基準法など)を知らないからです
知っていれば誠実に対処してくれることも少なからずあると考えます。

法律を知るのは自分を守ることになります。
あまりにブラックな言動が多い職場では、自分を守るには知識も必要です。

もしくは「普通」の定義を知るための知識でもあります。
・労働契約書があるのが普通。
・週40時間で1日8時間が普通。
・1時間程度は休憩時間があるのが普通。
・残業代は時給の1.25倍なのが普通。
・休日出勤なら時給の1.35倍なのが普通。
・・・などなど。

もちろん、すべてが法律通りガチガチに適うかどうかはわかりません。

あまりに杓子定規ではなく、多少はおおらかに構えてほしいです。
そのためには円滑な人間関係です。
自分と、院長やほかのスタッフとギクシャクしないように心がけたいですね。

気持ちよく働ける職場は、そもそも働いていて楽しいし、幸せなことです。
学びにもなります。
退職した後にもつながる関係は、大切な財産ともいえます。
心と心でかかわってください。

それでも対応できない事態には、法律という守ってくれる盾がありますからぜひ活用してください。
相談する場所は「労働基準監督署」です

以上、参考にしてください。

プロフィール
この記事を書いた人
めしたけ

首都圏のベッドタウンで鍼灸院をやっています。
鍼灸師キャリアは約20年。
短期の繁盛(=成功)よりも、安定継続(=失敗しない)を目指しています。
3人の子育て中のシングルファーザーでもあります。
開業・経営・生活全般など、あれこれ書きます。

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鍼灸院経営とひとり親生活のハナシ

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